ゲームの面白さは、上手くなることだけではありません。
自分で「強さ」の仮説を立てて試してみる。思った通りならばその方向を伸ばしてみて、うまくいかなければ別の方法を試してみる。
そんな仮説を立てることそのものにも、ゲームの面白さがあります。
『スプラトゥーン』は、「動かすこと」の面白さを追求してきたゲームでした。
原始的な遊びからスタートし、対戦における戦略と腕を磨く過程を楽しむ沼へと続いていました。
一方で『スプラトゥーンレイダース』はそこを超えてプレイヤーを別の沼へ連れていきます。
そこでは「問いを立てること」の面白さにはまり込んでいきます。最後はまさに無限の試行錯誤へと至ります。
今回はその一端に触れてきました。
動かすことが面白いアクションシリーズ
スプラトゥーンシリーズほどコントローラーを壊してしまうゲームは珍しい。それほど、プレイヤーを熱中させる作品です。
プレイヤーはヒトとイカを切り替えられるキャラクターを操作します。
ヒト形態では姿を現し、ブキからインクを発射できます。ステージをインクで塗ったり、相手にインクをかけて倒したりできます。
イカ形態では自分のインクに潜ることができます。姿を消し、素早く移動し、ブキのリロードや体力回復も行います。
イカ形態が強い一方で、ヒト形態でなければインクの塗り広げや攻撃ができません。
プレイヤーは対戦中の一瞬で状況を判断し、リアルタイムで形態を切り替えます。
「ヒトで勝負をしかけよう」
「今のうちに塗り広げておこう」
「不利だからイカで逃げるべき」
判断と操作の連続は高いアクション性を帯びるとともにどうしても力が入ってしまうもの。コントローラーへの負担も大きくなってしまいます。
しかし反復によって体に動きを染み込ませ、自由に動けるようになる。
そこに対人戦の駆け引きを組み合わせていく。
この過程は自分自身が上手くなっていくことを楽しませてくれます。『スプラトゥーン』は人気を博し、現在までに3作品が続くシリーズになりました。
動かすから組み合わせるに
『スプラトゥーンレイダース』はシリーズ初のスピンオフ作品です。本編とは異なり、一人でじっくりと遊ぶことを主軸にしています。アクションを受け継ぎつつハクスラ要素が加えられました。
ブキはレア度やブキパワーなど、ランダムで異なる性能を持ちます。
3種類のインクタンクが用意され、それぞれ得意なことが異なります。
タンクごとに専用ガジェットが用意され、組み合わせを考えます。
ガジェットにはパーツを付けてカスタマイズできます。
オタカラを集めると秘宝パワーを手に入れ、キャラクターに能力を与えてくれます。
それぞれ単独ではなく、組み合わせることで一つの強いビルドになります。
「強そうなブキを拾えた」
「どの組み合わせで使おうか」
「近距離で攻撃が上がる「インファイト」と、ガジェットのクールタイムを減らす「ガジェットブースト」を使おう」
「近距離に入って、攻撃力を上げ、ガジェットでどんどん処理をしていこう」
こうして単なる強化だけでなく自分なりの戦闘スタイルを作っていくことができます。
スプラトゥーンが「どう動かすか」というゲームだったとすれば、レイダースではその前に「どう組み合わせるかを考える」という遊びが加わっています。
練習と実験
印象深いのが本作の成長設計です。
ゲーム序盤ではレベルアップのステータス上昇が大きめに設定されています。そのためアクションが苦手でも、ゲームを続けていればキャラクター自身が強くなります。何度かの挑戦で強敵をクリアしやすく、成長を実感できます。
これは初心者にとって重要です。
いきなり「最適なビルドを考えてください」と言われても困ってしまいます。
まずはキャラクターを動かして敵を倒す。遊んでいるうちにブキやパーツ、秘宝パワーが集まり、ガジェットの使い方を学ぶ「つまみぐいダンジョン」も用意されています。
そしてレベル50を超えるとゲームの重心が変わってきます。
レベルアップによるステータス上昇の幅が小さくなり、代わりにビルドやブキ、パーツの強化、そしてプレイヤー自身の腕前が重要になっていきます。
それまで、「敵が強い。もっとレベルを上げよう」だったものが、「この組み合わせなら、もっと効率よく戦えるのではないか」へと変わっていきます。
少しずつ丁寧に、プレイヤーを動かす遊びから仮説を立てる遊びへと導いている。
ここが『スプラトゥーンレイダース』のゲームデザインで特に意識的に行われていると感じました。
強そうな組み合わせを見つけたら実際に試してみる。強ければ伸ばし、思ったほどでなければ別のパーツを試す。
そもそも自分の戦い方と、このビルドが合っていないのではという疑問が生まれたりします。
こうして「仮説→遊ぶ→新しい仮説」という循環が生まれます。
アクションゲームの練習とは少し違います。ハクスラゲームとしての実験へと変わっています。
もう一回を繰り返しやすい
この試行錯誤を支えているのがリプレイ性の高さです。
本作のステージはおよそ5分。30分のプレイで4~5ステージを遊べるテンポです。
「ちょっと遊ぶ」という気晴らしにちょうどいいボリューム感です。結果としてリプレイ性が高くなります。
少し調整したビルドを試したい。
一度ステージに入る。
結果が出る。
さらに調整する。
この短いサイクルがあるから、実験の心理的なコストが低くなっています。
加えて、ステージクリアは新しい報酬にもつながります。好奇心と報酬への動機が働いて、めんどくさくて腰が引ける場面が少なくなります。
他人の発見が、自分の仮説になる
この実験は、ゲームの中だけで完結しません。
YouTubeなどで他のプレイヤーのビルドや攻略を見ることも、本作の楽しみ方の一つになっています。「そんな組み合わせがあるのか」と知れば、自分でも試したくなる。あるいは、「その組み合わせも面白いけれど、自分ならこっちを試したい」と思うかもしれません。
見ても楽しい。やっても楽しい。
ゲームと動画、攻略情報、他のプレイヤーの発見がつながることで、ゲームの楽しさが外側まで広がっています。
無限周回に耐えられるか?
ただし、試行錯誤が永遠に楽しいわけではありません。 ゲームをやり込んでいくと、やがて「欲しいアイテム」が目的になってきます。
つまり、効率を求めて同じステージを何度もクリアするということです。
人によっては、いつ終わるか分からない中で周回することが苦行になるかもしれません。
ここを「やりごたえがある」と楽しめるか。そこが『スプラトゥーンレイダース』の評価を左右すると思います。
僕も1日2周すると決めて進めていました。同じステージを何度も回るというのは結構しんどかったと思います。
なぜ投げ出さなかったのか?
それは動画を観て、自分ならどうするか考え、仮説を立て、検証していくというループが途切れることがなかったからです。
自分のビルドをさらに改善していく先で、裏ボスを倒した際の充足感は、「本作の魅力を十分に味わった」と感じられるものでした。
ここで興味深いのは、周回そのものが楽しかったわけではないことです。
「もっと強くできるかもしれない」「あのパーツがあれば強くなるかもしれない」という問いが残っていたから、周回する理由が生まれていた。
逆に言えば、問いがなくなった瞬間、同じ周回は単なる作業になってしまいます。この違いは、ハクスラというジャンルの面白さを考えるうえでも重要です。
おわりに、『スプラトゥーンレイダース』が広げたもの
『スプラトゥーン』は、インクを塗り、イカになって動き回ることを楽しくしました。そこからプレイヤーは、操作を覚え、判断を磨き、対戦の駆け引きを楽しむようになる。つまり本編シリーズでは、「自分自身が上手くなっていくこと」が大きな楽しさになっていました。
『スプラトゥーンレイダース』は、そこへ別の楽しさを加えます。
「自分で考えたことを試して、まだ知らない可能性を発見すること」です。
ブキを拾う。パーツを組み合わせる。ビルドを考える。実際に戦ってみる。結果を見る。そして、また組み直す。
その繰り返しの中で、プレイヤーは用意された答えを受け取るのではなく、自分なりの答えを作っていきます。だから本作では、ゲームを遊ぶことがそのまま小さな実験になります。
もちろん、最後にはハクスラ特有の周回も待っています。そこまで含めて、誰にとっても快適なゲームだとは言えません。けれど僕にとっては、自分なりのビルドを考え、試し、少しずつ改善していった先で裏ボスを倒した瞬間に、本作の魅力が最もよく表れていました。
ゲームの面白さは、必ずしも「楽しいこと」だけではないのかもしれません。「これを試したらどうなるんだろう?」と思わせてくれること。そして実際に試してみた結果、自分が知らなかったことに出会えること。その繰り返しがある限り、ゲームにはまだ遊ぶ理由があります。
『スプラトゥーンレイダース』は、スプラトゥーンの「動かす面白さ」の先にそんな「試してみる面白さ」を見せてくれたゲームでした。
基本情報
- タイトル スプラトゥーンレイダース
- 発売日 2026年7月23日
- ジャンル サードパーソン・シューティング
- 対応機種 Nintendo Switch 2
- 開発元 任天堂
- 発売元 任天堂
- CERO A

コメント