『ぽこ あ ポケモン』は危険なゲームです。
プレイするのに必要なのは覚悟。
そしてスイッチ2本体とゲームソフトがあれば完璧です。
ソフトを立ち上げた次の瞬間にはもう寝る時間に。明日も仕事があるんだけど、手が止まらない。
「あと作業を一つだけ」
「あとはここを整えるだけ」
その繰り返しが、生活リズムを静かに侵食してきます。
サンドボックスが苦手だという人でも、やめ時を失わせるゲーム。
それが『ぽこ あ ポケモン』です。
へたでも賑やかになっていく街
本作のプレイサイクルは単純です。
ポケモンたちのお願いを聞く。
環境を整える。
新しいポケモンがやってきて、友達になる。
しかし、簡素でありながらも抜け出せない中毒的な楽しさがあります。
あっちこっちと街を駆け回るプレイヤー。
街に潤いをもたらし、草花を育て、素材を集めて、アイテムをクラフトして、ぴよぴよと話しかけてくるポケモンの相手をしていました。
ふと気付くと、くさむらがガサガサと揺れています。周りには「誰かいるよー」と、ポケモンたちがすでに集まりはじめています。
恐るおそる調べてみると、ドンドンドン、シャキーンと新しいポケモンが飛び出してきました。
それだけで気持ちがいい。
最初は、プレイヤーが操作するメタモンと、モジャンボはかせの二人で始めた環境づくり。次第に周りにはどんどんと友達が増えていきます。環境を整えていくことが出会いにつながり、それが強烈な報酬となって、やめ時は消えてなくなりました。
サンドボックスが苦手でも楽しめる
ブロックを利用し、創造するゲーム。それならば、『マインクラフト』を思い浮かべる方も多いはず。
しかし、僕はサンドボックスが苦手です。
好きだけど、苦手。
あこがれるけど、残念ながらセンスがありません。
『マインクラフト』をはじめとした「何をするかはプレイヤー次第」というゲームを前に途方に暮れる。僕もその一人です。そんな僕でも、本作は熱中しました。
両作はまったく違った手触りがあります。
『ぽこ あ ポケモン』はポケモンならではの集める楽しさがあります。ブロックも、種類が豊富で色分けも可能。かわいらしい世界観や解像度の高い家具のおかげで、環境を作っていく遊びやそれを眺める高揚感は独特なものです。眺め回す楽しさが強調されています。眺め回すだけでも十分。
一方で、本作はプレイヤーを一人ぼっちにしません。
やるべきことは、「お願いごと」として提示される。
壊れた街並みは、修復したくなる形で配置されている。
欠けた場所には、自然とブロックを置きたくなる。
環境を整えていくこと自体が、次のポケモンとの出会いにもなる。
そうしていると、次の新しい街にも行くことになります。
そこでもやるべきことが盛りだくさん。
素敵な建物や街並みを作りたいと思っても、アイデアが浮かばずにがっかりしてしまう。そんな僕でも、創造性を強要されず、しかし結果として「何かを作った」という実感はしっかり残る。
苦手な人でも十分楽しめるように導いてくれる紳士のようなゲームです。
その優しさの裏で時間を奪い去る詐欺師のようなゲームでもあります。
そして、『マインクラフト』とのもう一つの違い。
ポケモンというキャラクターは本当に強い。
思い出深いポケモン( フシギダネ! ゼニガメ! ヒトカゲ!)
思いのほかかわいいポケモン(取引場でレジに立つサワムラーとエビワラー!)
ポケモンたちはプレイヤーのそばで走り回り、遊び、おしゃべりをして、時にプレイヤーに話しかけてきます。
作業の合間にも街は賑やかです。
創造性という空っぽの砂場が用意されているのではなく、そこには生活や気配があります。へたくそな建築であっても、ポケモンたちは僕の街にやってきて、楽しそうに過ごしてくれる。
これだけでサンドボックスは寂しいなと感じる人でも十分楽しい気分にしてくれます。
可愛らしさの裏にあるもうひとつの物語
ストーリーも、しみじみと、良いなあと思いました。
お願いごとをこなしていく中で、ストーリーが進んでいきます。
もお、みんな、素直でいい子。
「にんげんはどこにいったんだろう?」
「わたしは気づいたら、ここにいたんだ」
「きっと、住みやすくしたら、にんげんも帰ってきてくれるよ」
ポケモンたちも純粋にがんばってくれます。
本作のポケモンたちは、どこまでも素直で、前向きです。
だけど、プレイヤーは気づいてしまいます。
廃墟や洞窟に刻まれた違和感。
人のいない街に残された痕跡。
ポケモンたちの視点とは別に、“人間がいなくなった理由”が明かされていきます。
プレイヤー視点からは、ポケモンたちのストーリーとは別に、ふたつ目の物語が進行していきます。
ポケモンたちが生きる、明るく素朴な世界。
そして、その背後に横たわる、人間の不在の物語。
このギャップが、作品に強い余韻をもたらしています。
危険なほど面白い
記憶を消して、もう一度最初からやりたい。
そう思うゲームは、そう多くない。
そんなゲームに出会えるのは幸福なことです。
『ぽこ あ ポケモン』は間違いなく、そんな一本でした。
出会いは鮮烈で、世界は賑やかで、作業は心地よく続いていく。
そして気づけば、現実の時間が過ぎている。熱中した充実感と、ちょっとだけ混じる絶望感。
本作は、そんな危険性を内包した作品でもありました。
プレイする際は、どうか翌日の予定に気をつけてください。
基本情報
タイトル 『ぽこ あ ポケモン』
発売日 2026年3月5日(木)
ジャンル スローライフ・サンドボックス
対応機種 Nintendo Switch 2
企画開発 株式会社ポケモン、株式会社ゲームフリーク、株式会社コーエーテクモゲームス
発売・販売 株式会社ポケモン
CERO A

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