『Pokémon LEGENDS Z-A』で最も印象に残ったのは、
本作がプレイ体験を通してどのような感覚をプレイヤーに手渡そうとしていたか、
その設計の明確さです。
その感覚は大きく分けて二つあります。
「隣にいる存在への信頼」と「時間の積み重ねが強さになる実感」。
モンスターを集めて育成するゲームは数多いです。
しかし、この感覚をここまで強めることに成功したのはポケモンシリーズ、
そのなかでも本編シリーズではなく、むしろこのレジェンズシリーズでした。
なぜ「こいつとなら勝てる」と思えたのか
まず一つ目。
ポケモンの魅力を、
単なる数値や手持ちの駒としてではなく、
「隣で行動する相棒」として体験させること。
チコリータ、ワニノコ、ポカブ。
三体の中から最初のポケモンを選びます。僕が最初に選んだのはワニノコでした。
『ポケットモンスター金・銀』でもワニノコを選んだなあ。
そんなことを思い出しながら初めてのポケモンバトル。
今作は従来のコマンド選択に、クールタイムとアクション要素を合体したものです。
バトル中に主人公は自由に位置を移動できます。
主人公が移動すると、ワニノコがトコトコついてくる。
相手のポケモンが繰り出す技を避けられるかというと、なかなか難しい。
それでも思わず、「こっち、こっち」と画面の中のワニノコに話しかけてしまいます。
暴走メガシンカという強敵とのバトル。主人公に向かっても技がどんどん飛んできます。
僕はそれを必死に避けるのですが、あとをついてきて、
代わりにダメージを受けてしまうワニノコ。
「ああ、ごめんよ」と思わず言ってしまう。
愛らしさを感じつつ。
アクション性が加えられたバトルで、主人公が移動すればポケモンが後を追いかけてくる。
プレイヤーの意識は自然と自分が操作しているキャラだけでなく、一緒に戦っている相棒に向かう。
その積み重ねとして、ポケモンとの間に信頼関係が生まれます。
共闘しているという実感が強く残り、
勝利を積み重ねていく中で、
強大な敵と対峙するときにも「こいつらとなら勝てる」という確信が湧いてくるのです。
これは演出・ドラマ・ストーリーというより、体験そのものを設計した結果です。
演出で感情を盛り上げるのではなく、
プレイヤーの行動とポケモンの存在を常に結びつけることで、
相棒感を強く意識させる設計によって生まれた感覚です。
作業を肯定する設計
もう一つ、本作が徹底していたのは成長の設計です。
カラフルネジやメガカケラを集める。
屋上に登り、アスレチックを越え、アイテムを手に入れる。
ワイルドゾーンでシルエットを確認する。
行為自体は反復的であり、いわゆる作業に近い。
しかし、それが苦痛になりにくい。
理由は単純で、投入した時間が明確に戦力へ変換されるからです。
作業をする。
ポケモンが強くなる。
新たなエリアや強敵が解放される。
新しいポケモンを手に入れる。
さらに作業を重ねる。
この循環が途切れにくいし、やめどきを失ってしまう。
強敵と対峙したとき、積み上げてきた作業という事実が支えになります。
作業は設計が失敗すると敬遠されてしまう要素にもなります。
しかし、本作では程よい成長のテンポを生み出しています。
DLCで崩れたテンポ
一方、追加DLC『Pokémon LEGENDS Z-A M次元ラッシュ』では、ややテンポが悪化した印象もありました。
異次元の出入りにかかるロード時間
いじげんきのみ集め
スペシャルサーチのハズレ枠
単調で色調の乏しい景色
ポケモンを群れで配置する唐突さ
高めの難易度
たしかに乗り越える達成感はありました。
ただ、本編で感じた「気持ちよく回るループ」はやや薄れていました。
なぜ都市一本の舞台で成立していたのか
舞台はミアレシティという一都市に絞られています。
フィールドの風景に大きな変化があるわけではなく、探索そのものの面白さや驚きは少なかったです。
しかし、その制限こそが機能します。
もしフィールド自体があまりにも魅力的で、ファンタジー色の強い世界だったとしたら。
「相棒」と「気持ちよく回る作業のループ」という二つの感覚は逆に薄まっていたかもしれません。
景色を見る楽しさや世界観への没入が強すぎると、
プレイヤーの注意は「世界」に向かいます。
一方で本作は都市という舞台によって
ポケモンが隣を歩き共に戦っているという感覚を、
ファンタジーとしてではなく「体験」として成立させていたのではないかと思うのです。
派手な自然や幻想的な風景を削ぎ落とし、
アクティビティやクエスト、個性豊かなサブキャラクターを密に配置することで、
本作は世界を見せるよりも、
ポケモンとの関係性と成長を感じさせる方向にプレイヤーの意識を集中させることに成功していました。
前作の『アルセウス』は逆に、
世界を探検してポケモンと出会うという体験が強かったと思います。
引き算で成立した体験設計
この転換、ある種の引き算の体験は、
賛否両論を引き起こすものではあります。
でも、これも一つの正解です。
結果としてこの作品は、スケールや多様な風景を追求するのではなく、
ポケモンとの距離感と、成長の気持ちよさを最大化する設計を選んでいたように思います。
この舞台を限定した設計は、プレイヤーの体感を深めることを優先した選択でした。
基本情報
- タイトル 『Pokémon LEGENDS Z-A』/『Pokémon LEGENDS Z-A Nintendo Switch 2 Edition』
- 発売日 2025年10月16日(木)
- 発売 株式会社ポケモン
- 販売 任天堂株式会社
- 企画・開発 株式会社ゲームフリーク
- ジャンル アクションRPG
- CERO A
- タイトル『Pokémon LEGENDS Z-A M次元ラッシュ』
- 配信日2025年12月10日(水)
- CERO A
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