ゴールデンカムイのワンシーン
『ゴールデンカムイ』6巻、第55話「鰊七十郎」
漫画『ゴールデンカムイ』にワンシーン。こちらは、幕末を生き残った土方歳三です。
立ち寄った町で権力闘争が勃発していました。土方は用心棒として雇われることを画策して片方の陣営におもむきます。しかし、「こんなボケ老人相手にするな」とけんもほろろ。土方はただ黙って聞いていたのですが、突然手下を二人きりつけます。
そして、この決め台詞。
幕末を生き残った土方に、チンピラでは力不足!
「言い換えの面白さ」?
「面白い」とはなんだろう? この問題はおそらく今後も折に触れて考えていって、そのたびに答えがちょっとずつ進んでいく問題だろうと思います。
そういう中で、土方歳三のセリフのように、面白さがぎゅっと凝縮された一言に出会うことがあります。
印象に残っているものもたくさんあるけど、例えば他にも。
読書をする時間がとれないなあ、と考えていたとき
24時間=1440分。1440分の1%=約15分。
(中略)
15分は魔法の単位。1日1%の知識貯金で、10年後圧倒的な成果を出す。まずは、明日のあなたの人生をラクにしてあげてください。
『1%読書術』p3
文章を書いて、「こんなことを書いて価値があるのだろうか」と悩んだとき
わたしたちが生まれてきたこと自体に意味がないように、文章にもとくに意味はありません。彊言うなら、その意味のない文章に、意味づけをするのは読んだ人。
『書く習慣』p46
僕は僕なりに暮らしています。そのなかで、僕なりに考えたり、悩んだり。「こうするのが当たり前でしょ!?」と勝手に思い込んでいたり。
こうやって、「自分なり」に浸っているからこそ、はっとした驚きがあります。
おじいちゃんではなくて、生き残りなのか! かっこいい!
15分で1%なんだ! これだけならできそう!
書く意味を考えてるのは自分ではなくて、読者なんだ! とにかく書いてみよう!
「自分なり」の盲点をついて、「ああ、そうか!」と感じられる面白さ。
ひとつひとつは別に難しいことを言っているのではありません。だけど、思いもかけていなかった新しい意味付けがされる瞬間です。
「面白いとは文脈のズレ」
面白いとは自他の文脈の差によって生じる驚きが源泉にある。
ひとつ仮説ができました。
その人によっては当然の帰結でも、他人から見たら面白い。
時には誤読・誤解・曲解ですら面白い。
ある程度、論理が通っていて、「なるほど一理ある」と思うときに面白さを感じることができます。
自分と他人の文脈を重ねてみたときのズレ。
決して、自分の中に無かった新しいアイディアではないと思います。
ちょっとずれたところにあったからこその面白さ。
これが、完全に遠く離れたところにあっては、ピンと来ないかもしれません。面白さより困惑を感じるのかも。
今のところの仮説の一つなんですけどね。
書誌情報
野田サトル『ゴールデンカムイ』集英社、ヤングジャンプコミックス、キンドル版
マグ『1%読書術:1日15分の知識貯金』KADOKAWA、2022年、キンドル版
いしかわゆき『書く習慣 自分と人生が変わるいちばん大切な文章力』クロスメディア・パズリッシング、2021年
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